裁量労働制ってどんな制度?

投稿日:2022年6月14日(当記事の内容は投稿日時点のものです。)

 「うちの会社は裁量を持って働ける環境です」と言われたりしますが、「裁量を持って働く」というと皆さんはどんなイメージを持つでしょうか?

「裁量を持って働ける会社」が労働基準法で定められている「裁量労働制」の制度を導入しているかどうかはまた別の話になります。

今回は労働基準法で定められた「裁量労働制」について解説します。

「裁量労働制」とは

通常、会社は従業員の労働時間について出勤時間・退勤時間を把握し、労働時間を管理する義務があります。ただ、裁量労働制を採用した場合は、実労働時間の計算は行わずに、「みなし時間」によって労働時間を計算します。実際の労働時間が10時間であった場合でも、労使協定で定められた時間が働いた時間とみなされます。例えば、労使協定で定められた時間が「8時間」である場合は、実際に働いた10時間ではなく、8時間働いたとみなされます。また、裁量労働制はすべての業務について適用できるものではなく、遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務について認められる制度です。

労働基準法で定められた裁量労働制は①「専門業務型裁量労働制」と②「企画業務型裁量労働制」の二種類になります。

①専門業務型裁量労働制

次の厚生労働省令で定める業務に限られます。

この制度を導入するためには、労使協定を締結し、所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。労使協定では次の事項を定める必要があります。

  • 制度の対象となる業務
    • 上記厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務
  • 労働時間としてみなす時間
    • 例:みなし労働時間を9時間とした場合、8時間を超える1時間については割増手当の支払いが発生
  • 対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
    • 働き過ぎ防止の観点から、年次有給休暇をまとめて取得させるなど
  • 対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
    • 会社とは別の第三者窓口を設け、対象労働者が苦情を申し出やすい仕組みをつくるなど
  • 協定の有効期間
    • 3年以内とすることが望ましい
  • 上記の労働者ごとに講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること

②「企画業務型裁量労働制」

事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査及び分析を行う労働者を対象とした制度です。

≪導入手順≫

裁量労働制のメリット・デメリット

裁量労働制のメリット・デメリットは下記の通りです。

表からも分かる通り、裁量労働制は、労働者の主体性を活かして能力を発揮するためには効果的な制度ですが、長時間労働や過重労働のリスクもあります。また、会社は裁量労働制を採用しても、労働時間を管理する必要がなくなるというわけではありません。過重労働を未然に防ぐためにも勤怠管理はしっかりと行うようにしてください。