年次有給休暇の相談事例

投稿日:2021年9月9日(当記事の内容は投稿日時点のものです。)

年次有給休暇年5日取得義務化の制度がスタートして2年が経過しました。今まで従業員の年次有給休暇取得が進んでいなかった企業も徐々に取得が推進されているのではないでしょうか。
ただ、有給休暇の取得・運用について、ルールの詳細を知らないため、結果としてトラブルを招いてしまうという場合もあります。今回は「年次有給休暇」について労働局によく相談される事例をご紹介します。

≪相談1≫
Q:アルバイトやパートには有給休暇は与えなくても良いのでしょうか?
A:年次有給休暇は、次の2つの要件を満たせば、アルバイトやパート、契約社員などの雇用形態に問わず与えられます。
・雇入れの日から6か月間継続して勤務していること
・その労働者の勤務を要する日(全労働日)の8割以上出勤していること
付与日数は以下の通りです。

 

≪相談2≫
Q:年次有給休暇は時間単位で与えることは可能でしょうか?
A:可能です。年次有給休暇は原則1日単位ですが、労使協定の締結により、年5日の範囲内で、時間単位での取得が可能となります(労働基準法第39条第4項)。労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定(労使協定)を締結する必要がある点に留意してください。なお、この労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。

≪相談3≫
Q:年次有給休暇を買い取ることは可能でしょうか?
A:原則として年次有給休暇を買い上げることはできません。労働基準法第39条第1項では、「有給休暇を与えなければならない」と規定されていますので、金銭を支給しても与えたことにはなりません。また、買上げの予約をして請求できる年次有給休暇日数を減らすことや請求された日数を与えないことはできません。

≪相談4≫
Q:年次有給休暇を取得したことを理由に社員を昇給・昇進させないことは問題でしょうか?
A:労働基準法附則第136条では、「使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」と定めています。「昇給・昇進」はその他不利益な取り扱いに該当しますので、「昇給・昇進させない」という扱いは認められていません。

≪相談5≫
Q:年次有給休暇の出勤率の算定に当たっては、業務上の傷病や産前産後で休業している日数及び育児休業期間・介護休業期間は欠勤扱いとしてよいでしょうか?
A:欠勤扱いとすることはできません。年次有給休暇の発生要件の出勤率算定にあたっては以下の期間は出勤したものとして扱わなければなりません(労働基準法第39条第10項)。
・業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため休業した期間
・育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第2条第1号の規定する育児休業又は同条第2号に規定する介護休業をした期間
・産前産後の女性が労働基準法第65条の規定によって休業した期間