この記事では、労働時間管理について解説し、労働基準法をベースにしたガイドラインに従って従業員の勤怠を適切に管理する方法について紹介します。「働き方改革」をきっかけに企業は従業員を守るために様々な対応を求められるようになってきています。労働時間管理の基本的な情報を理解し、正しく管理できるようにしていきましょう。
労働時間管理とは
労働時間管理とは、従業員の始業・終業時刻といった時刻から労働時間を把握して記録する管理のことです。厚生労働省の提供するガイドラインによれば、労働時間は以下のように説明されています。
労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たること
例えば、参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間は労働時間に該当すること
※ 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン.pdf P1
参照:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000187488.pdf
上記の引用で上げた「使用者の指揮命令下に置かれている時間」が「従業員の始業・終業時刻といった時刻」から算出される労働時間です。多くの場合は、始業時刻から終業時刻の時間から休憩時間を差し引いた時間になります。
使用者である会社の社長や役員は、様々な法律やガイドラインを満たすように労働時間を確認や記録をして「管理」しなければいけません。ただし社長がすべての従業員の労働時間を管理することは難しいため、多くの場合は人事労務担当者等が実際の管理を行います。
労働時間管理が必要な理由
労働時間管理の義務化
2019年4月より改正労働基準法が施行されました。この法律により、会社は労働時間を管理することが義務になりました。この法改正は従業員の働き方や待遇を守るために行われたものです。厚生労働省が提供する資料には、当時の労働管理についての課題が挙げられています。
- 労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる
- 長時間労働の是正
- 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等
※ 労働時間法制の主な改正経緯について P10
参照:https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000361723.pdf
従業員の健康管理
2006年3月には「過重労働による健康障害防止のための総合対策」が策定されました。また2020年4月には同対策の改正が行われ、ますます労働者の健康管理への関心が高まっています。
※ 過重労働による健康障害を防ぐために
参照:https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000553560.pdf
長時間働くことは、疲労がたまる大きな原因であり、医学的にも脳や心臓の病気と関連があります。働くことで健康を損なうことは避けなければなりません。そのため、働きすぎで疲労が取れない状態を避けるために、過度な長時間労働を減らし、労働者の健康管理を守る体制が重要となりました。
従業員の給与計算
従業員の給与は労働時間を元に算出されるため、しっかりと管理する必要があります。時間の長さだけでなく遅刻・早退や残業、休日出勤など出退勤時間や日に応じて、給与の控除や割増も発生するためです。
また2023年4月1日からは、時間外労働の割増賃金率の改正が施行されました。今まで対象外だった中小企業も大企業と同じように時間外労働時間の割増賃金率が義務化され、正確な労働時間の把握がより重要になりました。
労働時間を管理する上で必要なこと
労働時間管理のガイドラインへの対応
まず2017年01月20日に厚生労働省の策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の事項を満たしている必要があります。
※ 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン.pdf P1
参照:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000187488.pdf
ガイドラインでは大きく以下の3つの事項に分けて解説しています。これらを満たすように、労働時間に関する必要な情報を取得したり、運用を進めます。
- 適用範囲
- 労働時間の考え方
- 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置
始業・終業時刻の確認・記録
使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録しなければいけません。
※ 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン.pdf P1
参照:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000187488.pdf
本稿の「労働時間とは」で述べた通り、労働時間を把握するためにはまず最低限、始業時刻と終業時刻が必要になります。必要に応じて休憩時間を把握するための時刻が必要になります。
また労働日も併せて記録する必要があります。その上で、休憩時間を加味したり労働日なのか休日なのかといった事項が関わってきます。
自己申告の勤怠管理は原則、認められない
労働時間は客観的な記録であることが求められます。そのため従業員からの自己申告など、客観的ではない記録は原則認められません。以下によくある客観的な記録の利用例をあげます。
- タイムカード
- ICカード
- パソコンの使用時間などシステムの記録
労働時間の記録の保存
労働基準法第109条にもとづき、取得した労働時間の記録は一定期間保存する必要があります。
改正労働基準法等に関するQ&Aでは以下のように説明されています。
⑦その他労働関係に関する重要な書類
例:出勤簿、タイムカード等の記録、労使協定の協定書、各種許認可書、始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類(使用者自ら始業・終業時間を記録したもの、残業命令書及びその報告書並びに労働者が自ら労働時間を記録した報告書)…(中略)…
○ 改正法の施行日以後、上記の記録の保存期間は、現行の3年から5年に延長されます。ただし、経過措置として、当分の間は3年が適用されます。
※ 改正労働基準法等に関するQ&A P6
参照:https://www.mhlw.go.jp/content/000617980.pdf
このように使用者は、労働者名簿や賃金台帳だけではなく、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類も保存しなければなりません。
労働時間管理をする方法
タイムカード
従業員はタイムカードという出退勤を記録する紙に専用の打刻機を用いて印字します。記録に関して従業員の手を介さないため客観的な記録になります。紙であるため誰でもわかりやすく導入のしやすさに優れています。ただし打ち間違いといった訂正を行うことは難しいです。
ここに記録された出退勤時間を元にさらに労働時間を求めるための計算を行います。また拠点が複数ある場合は集計の運用をどうするか?など考えるところが増えます。
そのため、1拠点のみで比較的少人数の会社に向いているでしょう。
Excel(エクセル)
お金をかけることなく導入することができ、普段からエクセルを使用している方であれば自社の運用に合わせて自由にカスタマイズを行うことができます。また電子データであるためメールなどで複数拠点とも連携しやすい点もグッドです。
ただしご自身で勤務時間や残業時間を集計するための数式を作成することになり、最初に作成するときの手間やメンテナンスの手間が課題になります。またエクセルの場合は、従業員自身にエクセルに出退勤といった時刻を入力してもらうことがほとんどのため、客観的な記録とは言い難いです。
タイムカードよりは規模の大きい会社にも対応できますが、比較的少人数の会社に向いているといえるでしょう。
勤怠管理アプリやサービス
最後にシステムを利用する方法です。ICカードや専用の打刻機を利用して出退勤を記録します。記録に関して従業員の手を介さないため客観的な記録になります。システムに記録がすべて残っているため、従業員の打刻状況が一目で確認できます。残業時間といった複雑な計算もシステム側で自動的に行うことができます。
またインターネットを介して閲覧できるので、すべての拠点の出退勤をまとめて扱える点が大きな強みです。さらに勤怠の管理に特化したサービスであるため、勤怠管理に付随する申請機能など様々な機能を利用できるシステムもあります。
多機能で便利である一方で、システムになれないユーザーは導入前後で使いこなすことができずに困ってしまうケースもあります。また、使いたい機能はオプションで別料金や電話サポートはより高いサポートプランじゃないと使えないといった、導入に際してかかると思っていなかった追加費用が発生するケースもあり注意が必要です。
弊社の提供するICタイムリコーダーは基本的な労働時間管理の機能をすべて使えるのはもちろんのこと、他社ではオプションとなるような申請といった機能や電話サポートといったさまざまサポートを1プランでご利用可能です。
はじめての勤怠管理やいまのシステムに満足していないお客様は以下のお問合せページからまずお話をお聞かせください。
労働時間管理を行い、従業員の勤怠を適切に管理しよう
労働時間管理は労働基準法やガイドラインに則り、従業員の健康や法令遵守を守るために不可欠です。適切なシステムや方法を導入し、労働時間を正確に管理することで、企業と従業員の信頼関係を築き、効率的な組織運営を実現しましょう!
ピンバック: 勤怠管理をICカードでするには?ICカードの活用方法とメリット・デメリットを紹介 - ICタイムリコーダーお役立ちコラム