給与計算は、単に賃金を支払うだけでなく、労働基準法をはじめとする法令を遵守し、従業員との信頼関係を築く上で非常に重要な業務です。勤怠データは、この給与計算を正確かつ効率的に行うために不可欠な情報であり、その管理の重要性はますます高まっています。
勤怠管理システムと給与計算システムを活用し、連携させることによって更に業務を円滑に進めましょう。
給与計算に勤怠管理が必要な3つの理由
1. 法令遵守のため
給与計算では労働基準法によって労働時間、休日、休暇、賃金など、労働条件に関するさまざまな規定が定められているため、勤怠データを正確に管理することは、法令遵守の観点から極めて重要です。
2. 正確な賃金計算のため
出勤日数、夜勤回数、休日出勤回数など、さまざまな要素に基づいて支給される各種手当の計算に、勤怠データは不可欠です。勤怠データに基づいて、各従業員の労働時間(通常労働時間、残業時間、休日労働時間など)を正確に把握することにより、基本給、残業代、休日手当などの計算に必要となる正確な時間を算出することができます。
労働基準法で定められた時間外労働の上限時間を超えていないか、残業代の計算が正しく行われているかなどを確認するためにも、勤怠管理は重要な役割を果たします。
3. 人事評価、経営分析の資料として
勤怠データは、従業員の勤怠状況を把握し、人事評価の資料として活用することができます。また、生産性や人件費の分析など、経営分析の資料としても活用できます。
勤怠管理システムと給与計算システムの関係について
勤怠管理システムとは
勤怠管理システムは、従業員の勤務状況を正確かつ効率的に管理するためのツールです。
- 出退勤管理:指紋認証、顔認証、ICカードなど、様々な方法で出退勤を記録し、勤務時間を正確に計測します。
- 休暇管理:有給休暇、病気休暇などの休暇申請、承認、残日数の管理を行います。
- 残業管理:残業時間の集計、承認、上限設定など、残業に関するルールを管理します。
- シフト管理:従業員のシフト作成、調整、通知を効率化します。
- 勤怠データ分析:勤務時間、残業時間、休暇取得状況などを分析し、人材配置の最適化や業務改善に役立てます。
給与計算システムとは
給与計算システムは、勤怠データに基づいて、従業員の給与を正確かつ迅速に計算し、支払いを管理するためのツールです。
- 給与計算:基本給、残業代、各種手当、社会保険料、所得税などを計算し、給与明細を作成します。
- 源泉徴収:所得税の源泉徴収額を計算し、納付手続きを支援します。
- 社会保険料計算:健康保険料、厚生年金保険料などを計算し、納付手続きを支援します。
- 給与振込:銀行口座への給与振込データを生成します。
- 給与明細発行:従業員個別の給与明細を発行し、電子化やペーパーレス化に対応します。
これらのシステムを連携させることで得られるメリット、デメリットを紹介します。
勤怠管理システムと給与計算システムを連携するメリット
人手不足が深刻化する中、業務効率化と人件費削減は大きな魅力です。また、データの正確性向上や法改正への迅速な対応など、経営管理の面でも大きな効果が期待できます。
業務効率化
労働時間など勤怠データの給与計算システムへの手作業での入力作業が不要になります。勤怠管理システムで作成された勤怠データがそのまま登録されるため、運用が自動化されます。
また、手作業での入力がなくなると入力間違いや作業漏れなどのヒューマンエラーが起こりにくくなるため、給与計算の正確性も向上します。
人件費削減
残業時間の削減ができます。勤怠データを分析することで、業務のボトルネックを特定し、残業時間の削減に繋げます。また、人材配置の最適化ができます。従業員のスキルや勤務実績を可視化することで、人材配置を最適化し、人件費の無駄遣いを防ぎます。
ミス防止
データの整合性が取れます。勤怠データと給与計算データを一元管理することで、データの整合性を確保し、計算ミスを防止します。
法改正への対応
法改正に伴う給与計算ルールの変更も、システムの設定変更によって迅速に対応できます。コンプライアンス強化によって法令遵守を徹底し、企業のリスクを軽減します。
勤怠管理システムと給与計算システム連携のデメリット
次のようなデメリットが挙げられます。
- 新たに勤怠管理システムもしくは給与計算システムを導入する場合、初期費用や運用費用がかかる
- 労務・経理担当者がシステムの操作に慣れるまで負担がかかる
- 勤怠管理システムもしくは給与計算システムを従業員が活用してくれず、運用負担が増えた
システムを導入すれば負担が減る/問題が解決するわけではありません。自社の規模や運用内容に合ったシステムを慎重に選定し、デモや試用期間を活用して最適なシステムを導入しましょう。
勤怠管理システムを導入し給与連携した企業の事例3選
A社:卸小売業
【導入前】
複数の拠点でタイムリコーダーを設置し、各従業員が紙のタイムカードに打刻していました。各店舗の店長は、会社独自のExcel勤務表に手入力する作業を行っており、多大な負担となっていました。
また、管理部門では、店舗から送られてきたExcel勤務表と、紙のタイムカードの内容を照らし合わせ、二重に確認作業を行う必要があり、業務効率化が課題でした。
【導入後】
導入時は26店舗約180名で、システム導入には数カ月かかると見込んでいましたが、実際には1ヶ月という短期間で全店舗での本格稼働できました。既存のフォーマットをそのまま活用できたため、給与計算を行う管理部門への影響も最小限に抑えられました。
システムの導入により、26拠点の労務データをリアルタイムで一元管理できるようになり、勤怠管理業務の効率化が大幅に進みました。
B社:観光地物産店
【導入前】
従来は、紙のタイムカードとタイムレコーダーを用いて従業員の勤怠を管理していました。月末には、各部門長に承認を得た上で、労務担当者が給与ソフトに手入力する作業に3日程度かかっていました。事業拡大に伴い従業員数が増加したため、この方法は労務担当者の負担が大きくなり、限界を迎えていました。
【導入後】
月末の勤怠処理には数日を要していましたが、システム導入後はわずか数時間で完了できるようになりました。リアルタイムでデータが反映されるため、月末にまとめて処理する必要がなくなり、いつでも必要な時に勤怠状況を確認できるようになりました。
給与ソフトへのデータ入力作業のみで月末処理が完了するので、大幅な時間短縮を実現し、労務管理にかかる人件費を削減することができました。
C社:税理士法人
【導入前】
紙のタイムカードによる打刻後、給与締め日以降にExcel表への転記や集計といった作業が発生していました。打ち忘れなどのミスがあった場合、給与支払日までに修正作業を行い、給与ソフトに入力するという煩雑な作業が必須でした。
毎月50名分のデータに対してこの作業を繰り返すことは、管理部門にとって大きな負担となっていました。
【導入後】
紙のタイムカードの購入費用や、Excelへのデータ入力、集計作業といったコストを削減できました。リアルタイムで出退勤状況を確認できるため、打ち忘れや誤りを早期に発見し、修正作業による時間的な負担を軽減しました。
給与システムとの連携時の注意点
いざ勤怠管理システムと給与計算システムを連携する際、なぜか連携ができない!ということにならないよう、事前に確認しましょう。
どの連携方法に対応しているか
連携方法には主に2種類あります。
【CSV連携】
カンマ「,」でデータが区切られているCSV形式のデータファイルを使ってシステム間を連携する方法をCSV連携といいます。勤怠システムから従業員の労働時間や残業時間が記載されたデータファイルをエクスポートし、そのファイルを給与計算システムにインポートします。
CSV(Comma Separated Values)とは「カンマで区切られたデータ」という意味のテキストデータ形式のひとつです。項目一つ一つがカンマで区切られており、データのエクスポートやインポートに使われる代表的なファイル形式です。
【API連携】
勤怠管理システムから給与計算システムにインターネット経由で直接データを連携する方法をAPI連携といいます。勤怠管理システムで計算されたデータを給与計算システムはそのまま使うことができるため、データのエクスポート/インポートや手入力といった作業はいりません。
便利な連携方法ですが、CSV連携よりも対応しているシステムが限られています。
連携する内容が対応しているか
自社の就業規則に沿って取得した勤怠データを、給与システム側で正しく取り込むことができるか、取り込める項目に不足がないかを確認しましょう。連携できる給与計算システムの選択肢が複数あると、今後給与システムを変更しなければならない場合に、今までの勤怠管理システムを引き続き使うことができる可能性が高まります。
正しい形式でCSVデータを扱っているか
勤怠管理システムでダウンロードしたCSVデータは、情報修正・確認などのためにExcelでファイルを開いて編集、保存すると、数字や日付の形式が変わることがあります。対応しない形式のデータになると、給与計算システム側で正しくインポートできなくなってしまいます。
CSVデータをそのままの形式で保存したい場合は、ファイルの種類や保存形式を適切に選択する必要があります。勤怠管理システム側で正しい情報がダウンロードでき、CSVデータファイルを開かずにそのまま給与計算システム側でインポートできるよう、両方の設定をよく確認しておきましょう。
給与連携におすすめ!勤怠管理システム「ICタイムリコーダー」
多数の給与計算システムとの連携実績がある、勤怠管理システム「ICタイムリコーダー」を紹介します。
様々な給与計算システムとの連携が可能
「給料王」「弥生給与」「給与奉行」「PCA給与」「給料らくだ」など主要ソフトのフォーマットは予め登録されています。その他の給与ソフトでもフォーマットをカスタマイズ出来ますので、お使いの給与ソフトに合わせ自由にCSVを出力しインポートすることができます。
ワンストップのサポート体制でかんたん導入
給与計算システムの連携もサポート担当が手順をご案内します。充実のマニュアル・ヘルプ・サポートで、1日でも導入可能です。サポート担当がお客さまと同じ画面を見ながらセットアップのお手伝いします。
ご相談から導入後のサポートまで、専門のサポートセンターが一貫して対応します。特に電話サポートに力を入れており、状況を丁寧に伺いながら作業の支援を行います。
低コストの打刻装置
QRコード・ICカードを利用した勤怠打刻や、スマホ打刻で位置情報取得など、在宅勤務に関するお悩みにも対応いたします。ご用意しているどの打刻方法を選択しても、併用しても、オプション費用はありません。初期費用、サポート費用が無料で、1ID月額200円からご利用できます。
虹彩認証(生体認証)で出退勤打刻
黒目の部分である虹彩を利用した非接触による勤怠打刻が可能。衛生管理の厳しい食品加工、医療系などでマスクしたままでも出退勤が行えます。
クラウド型の勤怠管理システムでデータを一括管理
リモートワークや複数の工場・事業所の勤務表を本社でリアルタイムで閲覧できます。残業時間や休日出勤、深夜や遅刻・早退、打刻忘れなど様々な勤怠が月の途中でも確認できます。勤務修正やシフト管理がExcelのようにコピー&ペーストで操作できる点もおすすめです。
ICタイムリコーダーの資料を請求してみる 勤怠に関するご相談はこちら業務効率化のため勤怠管理システムと給与計算システムを活用しよう
勤怠管理システムと給与計算システムの連携は、単なる業務効率化だけでなく、企業にとって様々なメリットをもたらします。人件費削減、ミス防止、法令遵守、そして従業員のモチベーション向上にも繋がります。特に、正確な勤怠データに基づいた給与計算は、従業員との信頼関係を築く上で重要です。
導入を検討する際は、自社の規模や業種、従業員数などを考慮し、最適なシステムを選ぶことが大切です。労務管理のコスト削減とスムーズな運用を目指し、最適なシステムを導入することで企業全体の効率化に貢献できます。