近年の法律改正や働き方の多様化にともない、どうやって勤怠管理を行っていくべきかお悩みの管理者は多いのではないでしょうか。
適切に勤怠管理を行うためには、正しい知識を身につけることが大切です。そこで今回は、勤怠管理チェックの必要性のほか、チェック項目や特に注意すべきポイントなどについて詳しく解説します。
勤怠管理チェックの必要性
労働基準法上、企業は従業員の労働の記録を管理する義務があります。それは中小企業も例外ではなく、出勤・退勤時間や有給取得状況など、法律上で何をどう管理すべきか明記されています。
1. 企業に求められる法的義務
2019年の労働安全衛生法改正により企業には次の2つのことを義務付けられました。
- 労働時間を客観的な方法で把握すること
- それらの記録を3年間保存すること
適切に勤怠管理を行うことにより、コンプライアンスを遵守し健全な経営であると社外に示せます。
労働安全衛生法第66条の8の3
事業者は第66条の8第1項又は前条第1項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない。労働安全衛生規則第52条の7の3
第1項 法第66条の8の3の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。第2項 事業者は前項に規定する方法により把握した労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存するための必要な措置を講じなければならない。
※出典 厚生労働省 改正労働安全衛生法のポイント解説
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000372681.pdf
2. 正確な給与計算につながる
従業員の労働時間や休日数を集計し、給与計算を行うには出退勤や労働時間の記録を正確なデータとして残しておく必要があります。また残業代は保険料や税金に関わってくることからも正確な把握が求められます。適正な勤怠管理は、自社の給与計算を正確かつスムーズに行う前提条件と言えますし、従業員との信頼関係を築くためにも大切です。
3. 就業状況の適正把握により従業員の過重労働防止につながる
勤怠管理を行えば、誰がどのくらい長時間労働をしているかが可視化され、過重労働を早期に発見し防止することができます。過重労働の早期防止は、従業員の健康維持や36協定違反を回避する上でも重要です。また、過重労働が発生しやすい部署や時期を把握することにより、人員補充や業務フローの見直しといった是正対策も立てやすくなります。
4. 業務効率化により健全な経営につながる
勤怠管理を行うことによって、従業員一人ひとりや部署ごとの労働時間が可視化され、それに伴う人件費がどれくらいかが分かります。人件費を正確に把握できれば、効率化すべき業務がどの部署にあるのか検証できるなど、業務効率化に役立ちます。
勤怠管理でチェックすべき4項目
担当者が管理すべき項目は労働時間・休憩時間、出勤日、休暇取得日など多々ありますが、基本的な項目は以下の4つです。
- 出勤・退勤時間
- 時間外労働時間
- 振替休日
- 有給休暇の残日数
従業員とのトラブルを回避するためにも、これらのチェックはしっかりと実施していきましょう。
1. 出勤・退勤時間は正しく記録されているか
出退勤の時刻は、従業員が何時から何時まで働いたか、労働時間を把握するための必須項目です。1分単位で管理し給与換算しましょう。把握した情報は、遅刻や早退が多い従業員への適切な指導や配置換えといった対処にも活用することができます。
2. 時間外労働時間を正しく把握できているか
従業員が法定労働時間を超えて働いた時間についても、正確に把握することが重要です。企業は、時間外労働や深夜残業、休日出勤について、通常よりも割増しした賃金を支払う必要があります。それぞれで割増率も異なるため、賃金の割増対象となる労働時間を正確に把握する必要があります。
3. 代休・振替休日は適切に付与できているか
勤務時間だけでなく、日数や月単位の勤務状況の把握も大切です。「休日を取得できているか」、「休日出勤があった際には振替休日や代休をきちんと取得できているか」といった情報は、従業員の健康管理や生産性の向上に役立ちます。もちろん給与計算にも影響するため、適切に管理しておく必要があります。
4. 有給休暇を適切に消化できているか
従業員が有給休暇を消化できているかの管理も大切です。有休があっても、それを消化していない、もしくはできない環境にあれば、従業員は会社に対する不信感を募らせるでしょう。日々の勤怠管理で人事担当者が現状を把握して、従業員が有休休暇を適切に取得できる環境を整えましょう。
勤怠管理チェック時の注意すべきポイント
勤務形態や雇用条件によって管理内容が変わるのでしっかり確認しておきましょう。
以下の対象者は、特に注意が必要です。
- パートやアルバイト
- 扶養控除内希望者
1. パートやアルバイトなど正社員と異なる勤務体系の場合
パートやアルバイトの場合、週の勤務日数や一日の勤務時間が異なるため、それらをしっかり把握しておくことが必要です。適正かつ客観的な勤怠データをできるだけ手間なく収集できるよう、正社員への管理と同様に勤怠管理方法を検討する必要があります。
またシフト制を採用する場合、本人の勤務希望日や時間当たりの必要な人員の数なども考慮しなければならず、シフト作成にはかなりの労力を要します。できるだけ手間をかけずに行える方法を検討しましょう。
2. 扶養控除内希望者の場合
配偶者の扶養に入っている従業員の場合、年収や週の労働時間が規定上限を超えると、配偶者の扶養から外れる可能性があります。従業員が「扶養控除内」での勤務を希望している場合は、扶養控除内に収まるよう管理する必要があります。
繁忙期などでやむを得ず時間外労働をする必要がある場合は、他の勤務日の調整で総労働時間を抑える必要があります。従業員、管理監督者いずれもが適切に対応できるよう勤怠状況を共有しやすいシステムの導入が望ましいでしょう。
労基法による管理義務と自社の課題解決に適した勤怠管理チェック方法を確立しよう
働き方改革関連法の施行に伴い、勤怠管理の重要性は広く認知されてきました。使用者は、従業員の労働時間について「客観的な方法」に記録し、そのデータを一定年数保管することが義務付けられましたが、従来のやり方では対応できなくなって困っている企業も少なくないでしょう。
コンプライアンスを遵守し、従業員の労働環境を健全に保ちつつ、法規上の義務を果たすべきと分かっていても、専業の人事担当者が不在の中小企業において従来の方法で勤怠管理を効率化することは至難の業といえるでしょう。また本来の仕事に費やす時間を増やすことも課題の一つかもしれません。勤怠管理システムの導入は検討する価値があるといえます。
導入コストを抑えつつ勤怠管理を効率化するためには、管理すべき最低限のチェック項目を把握し、そのほか自社の解決すべき課題の有無やその優先度を明確にした上で、それらが解決できる勤怠管理システムを探すとよいでしょう。自社の状況に応じて適切なシステムはどれか、ぜひ無料トライアルのサービスを活用してみてください。